都紀女加王墓前バス停で待つ。

長崎生まれ佐賀育ち 中高福岡大阪在住 完全趣味の自己満足ブログ。 @tsukimecha

ブラック・ジャック 「刻印」について

https://m.youtube.com/watch?v=5VDwZ-mqOzc

 

とりあえず2:02:10からの「刻印」を見て欲しい。ピノコの声は置いといて

 

これは私がブラックジャックの中で一番好きな話である。私は母親に勧められて小学校1年生の時にブラックジャックを全巻揃えた。

 

途中のブラックジャックが時限爆弾に気付くシーン。漫画版では爆発まで気付かず、ブラックジャックはボロボロになり這々の体でなんとか歩いていくシーンに変わっている。

 

なので、ブラックジャックのその後の密告は「報復」であることは幼い頃の私にも理解できた。ただ、幼い頃の私はこの話を読んで少し後味の悪い疑問を持った。

ブラックジャックを爆殺しようとしたのは本当に間久部のサシガネじゃなかったのか?

・自分を死刑に送ったブラックジャックと再会した間久部はなぜあんなに冷静なのか?

という点。1つ目は正直この話だけ読んでも真相は分からないのでとりあえず置いておく。

 

2つ目は本当に謎だった。間久部の立場ならブラックジャックは憎くてどうしようもないはずだ。しかも最後のシーン、

 

ブラックジャック「気の毒したな、間久部。」

間久部「いや、これでいいんだ。」

 

の会話。このブラックジャックの煽りとも取れる発言と間久部の哀しい笑顔がとても複雑だった。

 

でも、私が成長するにつれてだんだんと分かってきた気がする。

まず、間久部がブラックジャックを殺したのかという点。これが本当だとしたら、殺し損ねたブラックジャックが自分を摘発することはもはや覚悟の上のことだっただろう。だとすると最後のシーンの間久部の冷静さは納得できる。間久部はブラックジャックとの勝負に負けたのである。古い大親友を裏切るという、誰も読めないであろう会心の一撃を喰らわせて負けたのだから、もうブラックジャックに怒りなどという安いものを持つことはない。そういうことなんじゃないか。

 

また、間久部がブラックジャックを殺そうとしていないとしたら。これは間久部にとってみれば完全にブラックジャックが一方的に自分をハメた事になる。でも、「君に裏切られるならしょうがない」くらいに思っていたように感じる。この二人の友情は想像以上に深いものなのかな、とも取れる。

 

という風に理解できるようになって、この話が1番好きになった。

 

 

だが、この話にはまだ続きがある。

 

 

実はこの「刻印」という話、もとは「指」という話だった。

しかし、「指」の話は単行本として発売される際に「刻印」に変更されてしまい、伝説の話となっている。

そして、「指」ではブラックジャック被爆後の間久部のセリフが

「証拠を消すためだ 悪く思うなよ ブラックジャックも運のない男だったな」

となっており、完全なる間久部のサシガネとなっている。

そして、「刻印」では警察に届けた証拠が骨への刻印だったわけだが、「指」では多指症(間久部は幼い頃指が6本あったが、数年前にブラックジャックが手術で指を切り取り5本にした)の名残りの指であったのだ。

 

つまり、「指」では完全なるブラックジャックと間久部の勝負になっている。しかもブラックジャックはこれを見据えてか数年前に切り取った指をしっかりと保存しておいたのだ。再び間久部と会い指紋の手術を頼まれることも、その後間久部によって命を奪われかけることも、そしてその指が決定的な一撃になることも知らずに…。。。

 

ちなみに「指」ではその後のブラックジャックと間久部の再会シーンはない。友情の完全なる破局で締めくくられる。

 

この事実を知った上でもう一度「刻印」を見て欲しい。

 

ブラックジャック「気の毒したな、間久部。」

間久部「いや、これでいいんだ。」

 

手塚治虫氏がなぜこう変更したのかとか考えるとまた面白い。