都紀女加王墓前バス停で待つ。

長崎生まれ佐賀育ち 中高福岡大阪在住 完全趣味の自己満足ブログ。 @tsukimecha

さ る ぼ ぼ

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まだ私が社会の汚さも知らない純粋な幼稚園児だったころ。

 

 

親戚からお土産で「さるぼぼ」を貰った。顔が赤くてちょっと不気味な人形。なんでも、「願い事を一つ叶えてくれる」というものらしい。

 

貰ったところでどうしようも無いので、しばらくは我が家の玄関先に飾られていた。でもすぐにそれも邪魔になって、気付いたら部屋の奥の棚の上に置かれるようになった。

 

とある日、私は幼稚園で友達の〇〇君と喧嘩した。理由は覚えてないけどかなり怒っていた。その日はそのまま仲直りできずに帰って、ふとあの「さるぼぼ」を思い出した。

「〇〇君が風邪になりますように」

その時の私にとっては最大限の報復だったのだろうか。そうお願いした。どうせ何も起こらないと思って。

 

次の日、私も〇〇君も普通に幼稚園に来た。お互い1日経てば昨日の些細なことなんて忘れるもので、すぐに仲直りした。

 

だが昼ご飯前に〇〇君は急に具合が悪くなった。先生が熱を測り、親に連絡し、昼前に帰ることになってしまった。

 

この時私の中には様々な感情が渦巻いた。恐怖、罪悪感、後悔、反省。親に連れられて帰る〇〇君に「早く良くなると良いね」と声をかけながらそれをしている自分が恐ろしく憎らしく見えた。いやまさか、自分のせいじゃない。そう信じたかった。

 

家に帰ると部屋の奥にあの「さるぼぼ」は変わらずいた。表情ひとつ変えぬ(表情も何も顔がないが)佇まいにまた恐怖を覚えた。

「あんな酷いことをして、なぜ変わらずそこにいられるのか」

「…でもこれを願ったのは自分じゃないか」

訳もわからずその「さるぼぼ」を投げ捨てた。もう忘れようと思った。

 

それから約20年、今でも忘れられずにふとした時にこの話を思い出す。誰にも話したことがない、人生で1番の恐怖談。